それにしてもひどいな。

駅の花壇のふちに腰掛けながら、そんなことを思っていた。
私の目の前で、ストリートミュージシャンのように、
高校生くらいだろうか。
少年がギターを抱えて歌っていた。
なぜか私はその光景に引きつられてしまった。

ただいま夕方の5時ほど。
駅の正面ということもあって、帰宅しようとする人たちが
通っていく。
背広を着た人なんていやしない。
部活帰りのジャージの中学生、
おかしを食べつつおしゃべりにいそしむ女子高生。
今日の晩ご飯の買い出しだろうか。
大荷物を抱えたおばさんも歩いていく。

いや。私だけが着ている。背広を。
社会人になって2年。
今日はたまたま仕事も早く切りあがったので、
こんな時間でもぼんやりガキの下手くそなギターを聞くことが
できているわけだ。

それにしてもひどいな。
再びそんなことを考えた。
音をはずしすぎ。ギターもべんべん鳴らしてるだけ。
心の中で、目の前の少年をそう酷評してみた。
そうは言っても、私に音楽の素養があるわけでもなく。
その歌自体、知ってるものではないので、それが正しい音程かも
しれない、という可能性もあった。
それでも私はお粗末な光景と、ぼんやり見ていた。

となりで踊っていたニイちゃんが、ラジカセの音楽を止め、
髪をかき上げながらしゃがみ込んだ。
この広場はどうもそういった人間が多いらしい。
そのニイちゃんはペットボトルの水を飲み始めた。
私も少し、ノドの渇きを感じた。

ギター少年の演奏は必死にも見えた。
なにかガムシャラな、そんな年頃なのだろう。

それを見ながら、私は学生時代のことを思い出した。
そんな自慢できるものでもないが、人並みに勉強したり(本腰
入れるのは試験のときくらいだが)、友人に誘われて合コンに
参加したり(数を合わせだったこともあるだろう)。
いっちょ前に就職活動したり。それで今にいたるわけだが。

彼女ができたこともあった。
とてもよくできた娘だった。
やさしかったし、気だてもよかったし。同姓にも頼られてた。
それこそ姉御肌というやつだろうか。
私自身、ときおりそれに甘えてた部分があったかもしれない。

過去形なのにはわけがある。
もちろん別れてしまったからなのだが。
就職するにあたって、地方から出るため、
私発信で別れることにした。
遠距離恋愛なんてとてもじゃないが耐えられない。
そんな陳腐な理由で別れることのほうが、もっと勇気がいる
決断じゃなかっただろうかと後悔するにも遅すぎる。

そのときの別れ方は、自分のことながら、
なんてヒドイヤツなのだろうと、思ったものだ。

さてと。

ギター少年もようやく満足といったところだろうか。
ひとしきり演奏し終わり、ギターをしまい始めた。

私も帰るとするか。
と、その前に。

その少年のそばにより、肩をたたき、
「次にやる時はもう少しうまくなれよ。」そう言ってやった。
その少年ははにかみながら、「ありがとうございます。」と、
中腰のまま会釈した。
むこうも自分のことを見ていた私に気づいていた様子だ。

その小さなライブが、彼にとって、デビューだったのか、練習
だったのか、そんなことには興味はない。

なぜか私に懐かしさを与えてくれた、そんな彼をたたえたい。

時間を見るために、携帯電話を取り出した。
ただいま5時半。意外に長いこといたものだ。

携帯をしまおうとすると、突然それが鳴り出した。
最近の流行の曲だ。
知っている番号からだった。携帯を広げ、通話ボタンを押す。

「はい、もしもし。」

後書き>本日はネタがございません。
と、いうわけで、初の小説日記。
本日思いついたばかりの作品。構想20分。
帰りの駅でギター少年がいたものでw

タイトルは一応意識してみましたが、少しずれてる?
文体はキャラとして。主観型は書きやすいので。
「彼女とのひどい別れ方」なんですが、思いつかなかったと
言うより、人道的に不自然なのしか思いつかなかったら。

このへん何かいい案がありましたら、是非コメントください。

本日は以上です〜。

コメント

かっちょの母
2006年6月22日0:56

私がコメントしてもいいのかな…
とても良い作品ですね。いろんな才能をお持ちなんですねぇ。

「ひどい別れ方」については、遠距離に入る前に先手を打つのもありかと思いますが、
二人とも就職したとして、
お互いに新しい環境に適応するのに必死だった。
彼女が一番苦しいときに、私には彼女を受け止める余裕が無く、結局彼女を切り捨ててしまった・・・
みたいなニュアンスはいかがでしょう?
イマイチかな… 構想30分!
次回作も楽しみにしてます。

黒銀聖夜
黒銀聖夜
2006年6月22日1:04

アイディア提供ありがとうございます。

就職後から関係が終わったという展開は私にはありません
でした。
ひどい別れ方ということで、どちらかというと何の前触れも
ない、幸せな状況からの崩壊と考えていたので。

参考にさせていただきます。

今後の作品で、また「彼」のことを書くかもしれません。
そのときは「彼女」のことも掘り下げたいなぁ。

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