僕には生まれてから、父親というものがいなかった。
僕が生まれてすぐに死んだんだそうだ。
だけどそんなの気にせず生きてきた。
母親もいたし、何よりじいちゃんがいた。

「ただいま。」
そう言って、学校から帰るといつも「おかえり」と、居間から声を掛けてくれる。
片親で、経済的に苦しまないために、寂しくならないためにと、
働きづめの母の代わりに、じいちゃんが親代わりに僕の世話をしてくれた。
そんなじいちゃんはいつもおやつに三色パン?というのを買ってきてくれた。
こぶが3つくっついたような形で、それぞれにいちごジャムとクリームと
あんこが入っているやつだ。
幼くてあんこのつぶつぶ加減があまり好きじゃなかった僕は、そこだけちぎり
じいちゃんに渡して食べていた。
こうして食べるあんこのない三色パンとじいちゃんが僕は大好きだった。

じいちゃんは穏やかな人だったが、厳格とまではいかないまでも厳しい人だった。
特にウソが嫌いだった。
僕が友達とケンカして泥だらけになって帰ってきた時のことだった。
じいちゃんは僕をすぐに問いただした。
詳しくは忘れたけど、たしか僕が発端のケンカだったと思う。
だけど、それを言うのが悔しくて、僕はその友達が原因だとののしった。
けど、じいちゃんにはすぐばれた。かなり怒られた。
そして、すぐに謝りに行くぞと、そのままそいつの家に連れて行かれた。
たぶん、少しすねたところのあった僕は、じいちゃんのこの行動がなければ、
そいつに謝る機会を失っていて、今でも友達とはありえなかったかもしれない。

そんな少年期を辿ったおかげで、正直に生きてこられたと思う。

食うに困らず、大学まで行かせてくれた母親にも感謝しているが、
育ての親であるじいちゃんには感謝しても仕切れなかった。

社会人になって7年。
そのじいちゃんが倒れたと、母親から連絡があった。
どうにも具合が悪いらしく、会いに来てくれないかと言われた。

仕事も忙しい時期だったし、妻が身重なこともあって、僕は躊躇した。

それでも、残った有休をフルに使って、「お見舞い」に行こうと試みた。
恐る恐る、上司に相談する。
上司は飄々とした調子で、「行ってやれ。なぁに、お前がいないくらいのほうが
みんなケツに火が点いたみたいに頑張ってくれるさ。」
頭も含めて温水洋一みたいな上司だったが、
その時の僕には顔が阿部寛かトヨエツに見えた。

自宅に帰り、お腹をさする妻を心配したが、一人で行ったほうがいいと思うと、
逆に心遣いを受けるはめになった。
予定日まで2ヶ月もあるし、それならと思ったが、(妻の)妹に来てもらうから
心配するなと、背中を押してくれた。
つくづくいい嫁をもらったものだと思い知った。

病院に着いた時、じいちゃんは昔と変わらぬまま、いや、むしろもっとか?
すこぶる元気だった。
ちょうどご飯を食べ終わったところだった。
でも、お盆の上にある皿にはかなりの残り物があった。
やはり体力は落ちているようだ。
食事後ということで、じいちゃんから入れ歯が外され、看護師が病室に備え付けの
手洗い場へと洗いに向かう。
僕はそれを制し、「僕がやっておきます」とその場をご退場願った。

こうやってじいちゃんと二人きりになるのは何時振りだろう。
しばらく話していて、少し時間が空いた。
話したといっても、じいちゃんの一方的なおしゃべりだ。
母ちゃんがセンスのないバッグを買っただの、
さっきのじゃない看護師さんのほうがかわいいだのと。

ばあちゃんがそのうち来るとのことで、
僕は売店で買った小説を読みながら待つことにした。
表紙が子供の描いたピンク色の花の絵で、タイトルは「小さな庭で」。
なんでこれを選んだのかはよくわからないが、時間は潰せるだろう。
ベッドで横になったじいちゃんは、僕が子供のころに比べてさらに骨張っていた。
顔を見るに寝息を立てているようだが、布団の上下が小さすぎて心配になる。
気を取り直して小説を読み進める。
主人公の女性と、その母親の話らしい。

「春になったら、また桜を見に行こう。」
そう言った私の握っていた手をほどき、母さんはそっぽを向いた。
「春は遠すぎる。それよりも、家の庭でコスモスを見ていたい。」
少し涼しくなった風が、これまた少し痛んでしまった母さんの髪をすく。
帰りましょう、そう言って車椅子を押すように母さんは私を促すが、
家にはまだ帰れないでしょ。
自分で言っておいて、思わず涙がこぼれた。
9月というのはまだ私には暑いようだ。

そこまで読んで、僕は本を閉じた。
どうやら「そういう」話らしい。
事実を突きつけられたようで、僕は動揺した。

「おい。」
はっとした。
声の出所に目を移すと、じいちゃんが目を覚ましてこっちを見ていた。
「どうしたの、じいちゃん。」
気づかれないようにつとめて、僕は笑いながら問いかける。
「嫁さんの、ほら、赤ちゃんはいつだったか?」
「再来月くらいだよ。」
「そうか。」
「どうしたんだよ。」
「いやな、お前の父ちゃんみたいにお前がさっさと死んじまったら、
お前にした時みたいに俺がその子の父親になってやるよ。」
「無茶苦茶言うなよ。しかもじいちゃん、父親どころかひいじいちゃんだぞ?」
先に・・・いや、言いかけてやめた。
それを悟ったのか、じいちゃんは、
「お前の子供が生まれるまでは死なんよ。」
いつの間にか、冗談を言うようになったものだ。

そんな話をしている間に、ばあちゃんが部屋に入ってきた。
かなり重そうな荷物を持っていて、それで腰が折れ曲がっちまってるんじゃないか
と思えるほどだったが、荷物を降ろせばなんのことはない、本当に曲がっていた。
「ばあちゃん来たし、また明日な。」
そう言って部屋を出た。
あまり長くない。そっと、ばあちゃんがそう教えてくれた。

実家に戻り、しばらくの有休を堪能していたが、そうも言ってられなくなった。

じいちゃんがぱったりと逝ってしまった。
静かだった家が、急に慌ただしくなる。

悲しむ間もなく有休の切れた僕は、会社に忌引きを伝える。
上司が出た。
「そうか・・・しっかり休んで、しっかり泣いておけよ。」
気の利いた、慰めの言葉のつもりなのだろう。
僕にはその声が伊武雅刀のように落ち着いた彫りの深い声に聞こえた。
でも頭も顔も温水だと思うと、少し心がやすらいだ。

じいちゃんの葬儀は滞りなく済んだ。
でっかい葬儀場を頼んで正解だった。
会場が溢れかえるほどの人。
じいちゃんの人望なのか年の功なのか。
そう思うと改めてじいちゃんがすごい人なのかと思った。

それから2ヶ月。
僕に子供が生まれた。
こんなに我が子はかわいいものなのかと思い知った。

今日は4月1日。
ウソがどうのこうのとかいう日だったからか、このことを思い出した。
僕の子供が生まれるまで生きてやると言ったじいちゃん。
でも、ウソになっちゃったね。
いや。本当は自分でも気づいてたんじゃないかな。

じいちゃん。
僕は父親になりました。
でも、僕は親父というのがどんなものか知らない。
だけど、僕にはじいちゃんがいた。
きっと、親父というのはじいちゃんみたいな人を言うのだろう。

↓↓↓↓↓↓

フィクションもウソに入るよね。

ウソというのは誰かを陥れるためにあるんじゃなくて、
誰かに優しくするためにあるんだと思うよ。

ていうか、エイプリルフール終わってるしw

もうちょっと練りたかったけど頭回らなかったです。

今日も会社でした。

年度初めだというのに。

思いっきり遅刻してしまいました(_ _;)

いやぁ、思わず二度寝してしまって。
目覚ましにバックドロップ決めたところまでは覚えている。

じゃなくて。
何故か目覚ましをベッドと壁の隙間に落としてて(もちろん手動で
それが床に落ちた音で飛び起きました。

その時計の時間見て二度びっくり。
ダメなスタートです。

というわけで会社でお仕事だったわけで。
9時過ぎくらいに帰りました。

帰りにコンビニ寄ったらコナンの新刊が出てたので買うことに。
ついでにDMも買ってきました。
9パックほど。
光り物はHELL、バルクライ、オラシオン、イナバ。
そして・・・・シデンw
シデンですよ、シデン。
いや、別に使う予定ないですけども;
シーザーのほうがデッキ作ってみたいんですけどねぇ。
ついでにアマテラスの4枚目も出ましたw
これでアマコン作るぜ、と思ったけど、アゲインがまだ3枚しかないや;

という感じです。

ちなみに、遊戯王のゲームはストーリーをクリアしました。
後はひたすらデュエルしまくってコンプ目指します。
BF組みたいのでクリクラ買いまくってるけど、残すはシロッコ1枚。
これで全部3枚そろうのに。
それから、グラディは攻略サイトによると野良デュエル3勝ずつじゃなくて
5勝らしい。これだから攻略本はあてにならない。
それと、微妙にソフトがバグってます;
ショップでカードを買って抜け出たりするたびにリスト追加のアナウンスが
出るんだけど;
もちろんリストが追加されてるわけもなく。
ついでに収集率80%越さないとリストは出ないはずなんですが、EE1だけが
40%なのにリスト出ちゃってるのは何でなんだぜ?

明日は会社です。

本日は以上です~。

コメント

ゆうパパ
2009年4月2日22:52

はじめまして、北海道の親子プレイヤーです。

リンクいただきました。
よろしくお願いします。

黒銀聖夜
2009年4月2日23:36

ゆうパパ☆さん>コメントありがとうございます。

こちらからもリンクさせていただきます。
これからもよろしくお願いします。

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