フウロ「ぶっとビングだよアタシ!!」
2011年6月14日 趣味「また負けた~。」
「これであたしの19勝目。やったね、モカ!」
「エモ~。」
目を回しているマメパトのメメを撫でながら肩を落とす。
「アタシ、そんなに勝ててないの?」
たしかに相性悪い。
アタシの大好きな飛行ポケモン達に対してカミツレちゃんは電気ポケモン。
だからって同じ駆け出しトレーナー。
やっぱりショックだ。
「またやってる。いつも元気だなあ、2人は。」
「あ、アララギのおじさま。」
よくうちの飛行場を利用してくれるお客様で、ポケモンについて詳しい。
ただただ詳しいかと思ったら、エライ博士だと知ったのはほんの最近。
「あのねあのね、またカミツレちゃんに負けちゃったの。」
「だってフウロったらいつも飛行ポケモンしか使わないんだもん。」
「モン。」
エヘンとばかりに腕組みをしているカミツレちゃんと涙目のアタシを
おじさまは優しい目で眺めてくれていた。
「そうか、惜しかったね。ちゃんとポケモンセンター連れて行ってあげなさい。」
「ところでおじさま、その大荷物は?」
「ああ、君のお父さんに用だよ。仕事場かな?」
「とっくに次の便の準備してるよ。」
「そりゃイカン。またな、フウロくん、カミツレくん。」
慌てるあまりこけそうになるおじさまに、ポケモン博士の威厳は感じない。
だからこそ抵抗なく話せるのかもしれない。
「ああ・・・。」
メメの治療をしてもらい手持ちぶさたなアタシはポケモンセンターにある
トレーニングコートのベンチでため息をつく。
「どうしたの?」
「モン?」
エモンガのモカをかかえたカミツレちゃんが顔をのぞき込んできた。
「だって・・・。」
思わず不機嫌な顔になってしまう。
「アタシとカミツレちゃん、トレーナー歴は一緒なのに全然勝てないし。」
この4月の進級。
そのお祝いに、アタシはメメを、カミツレちゃんはモカを、
アララギのおじさまからもらったのだ。
「だってフウロ飛行ポケモンしか使わないもん。」
「モン。」
「あたし電気ポケモン好きだもん。」
「モン。」
ポケモンはトレーナーに似るっていうけど・・・この場合どうなんだろう。
「でもアタシ飛行タイプが好きなの。だからメメと頑張りたいの。」
「じゃぁ、他の飛行ポケモン使うのはどう?」
「たとえば?」
「電気に強いのは地面だから、グライガーは?」
「グライガー?このへんじゃ珍しいポケモンだよ。そんなのどうするの?」
「アララギのおじさまに頼んで・・・」
「ダメだよ、この前メメをもらったばかりだし。」
「じゃぁ、他のタイプのポケモンは?」
「飛行タイプのかっこよくてすごいところがいいの!」
う~ん。2人と1匹はいいアイディアはないものかと空を眺める。
スワンナが1匹、優雅に飛んでいくのが見えた。
「そうだ!」
これほどの名案があっただろうか。
「エモンガも飛行タイプじゃない。」
「そうだけど・・・?」
「・・・?」
「だったらモカちゃん貸してよ。これなら飛行タイプパーティーだよ!」
「イヤだもん。モカはあたしのポケモンだもん。」
「ええ、ちょっとだけでいいから・・・ほっぺプニプニモカちゃ~ん」
「あたしのポケモンがいなくなるもん!フウロとバトルできないよ?」
「それは困る・・・。」
「でしょ?」
「でもせめてほっぺをプニプニする権利くらいはあるはずです!」
「・・・それくらいなら。」
「エモ!?」
いつの間にか夕方になっていた。
ひとしきりほっぺを堪能したら、また悩んでしまった。
「やっぱり地道にメメと一緒に頑張るしかないか。」
「そうだよ、それが一番だよ。」
まだもやもやしながらもベンチから立ち上がる。
「よし、カミツレちゃん。今度は来週勝負だよ。それまでメメを鍛えるんだ。」
「うん、楽しみにしてる。今度も負けないもん。」
「モン。」
ほっぺをさするモカを抱いてカミツレちゃんは帰って行った。
さてとアタシも帰ろう。
「・・・あ。メメ引き取らなくちゃ。」
パパは今夜は便の都合でいなかった。
ママと2人の晩ご飯のあと、アタシはパパのお土産のいかり饅頭の箱を開ける。
「今日はつぶあんとカスタード~と。」
おやつをたずさえ、テレビの前のソファに座る。
「フウロ、晩ご飯食べてすぐにそんな食べちゃダメじゃない!太るわよ!」
「ママみたいに?」
「・・・まずは明日の朝ご飯なくていいかしら?」
「ごめんなさい。」
成長期だし、きっと全部身長にいくんだから。
ゆくゆくはきっとアララギお姉ちゃんみたいにスタイルよくなるんだから。
そんなことを考えていたが今はどちらかというとママ似かもしれない。
お饅頭を食べながらも昼間のことが気になった。
ああは言ったものの、メメだけでカミツレちゃんに勝てるのだろうか?
ぼんやりしながらテレビをつける。
最近始まったアニメをやっていた。
初心者同然の男の子がひょんなことから強い敵を倒すカードゲームのアニメだ。
内容はよくわからなかったけれど、その子がひたむきに頑張る姿を
何故か鮮明に覚えている。
「アタシも・・・この子みたいに頑張ればいつかきっと・・・。」
少し元気でてきたかも。それともお饅頭のおかげ?
早速アタシとメメの特訓の開始だ。
そればかりが気になって、学校でも授業は上の空、
給食も3杯しかおかわりできなかった。
「まずはレベル上げだよ。おー!」
「ポー!」
とにかくポケモンと戦ってバトルに慣れよう。
そう思い草むらをうろうろしてみた。
きずぐすりはいっぱいある。とにかくメメと頑張ってみよう。
「あ、あれは・・・。」
野生のクルミルだ。
虫ポケモンは飛行タイプに弱い。
これならマメパトでも勝てそうだ。
「ちょっとそこのクルミル!」
あ、驚かせちゃった。
クルミルはすごく怯えている。
ごめんね、ごめんね。
「アタシのメメとバトルしてください!」
「ポー!」
「く、クルゥ・・・。」
なんか申し訳ないなあ。そもそも野生のポケモンとバトルってこんな感じだっけ?
「メメ、かぜおこし!」
「ポポー!」
クルミルが何か糸みたいなものをはき出していたがそれを遮り、
メメのかぜおこしがヒットした。
「クルゥ・・・。」
ぱたり。クルミルを倒した。そういえば草と虫の2タイプなんだっけ。
「やったー、メメ勝てたよ!」
「ポッポー!」
「・・・あ、えと、クルミル、急にごめんなさい、そしてありがとう。」
そういえば初めてポケモンバトルで勝ったのか。
早速今のバトルを復習だ、とバッグからノートと鉛筆とポケモン図鑑を出す。
「え~と、今のバトルとわ・ざはと・・・。」
バトルでの初勝利に昂揚していた。しかし、反面冷静であったのかもしれない。
「そうだ!」
1週間なんてあっという間だった。
あのクルミルとのバトルの後も草むらを回っては色々なポケモンとバトルした。
マメパトも新しい技を覚えた。
「カミツレちゃん、勝負だよ。」
「あたしも今日が楽しみだったんだから。負けないもん!」
「モン!」
カミツレちゃんのポケモンはモカだけみたい。
「あのね、アタシ新しいポケモン捕まえたの。使ってもいいかな?」
「1対2ってこと?う~ん、でもどんなポケモンか気になるな。使っていいよ。」
「よ~し、行け、ルミちゃん!」
「クルゥ!」
「!?」
「!?」
アタシの新しいポケモン、クルミルのルミちゃん。
そう、初勝利のバトル相手のあのクルミルだ。
「・・・虫ポケモン?」
「そうだよ、ルミちゃんだよ。」
「飛行ポケモンじゃなくて?」
「今はこんなちっちゃな虫だけど、いつか羽が生えて大空を飛ぶんだから!」
「クルミィ!」
「そう・・・だったっけ?」
このアタシの大胆な理想は近いうちに大きく裏切られることになるのだが
それはまた別の話なのである。
「・・・それとフウロ。」
「なに?」
「その子のこと、ルミちゃんって呼んでるけど・・・。」
「うんうん。」
「オス・・・だよ。たぶん。」
「え?」
気づかなかった。名前から勝手にイメージしてニックネームつけてたから。
本当だった。
図鑑の手持ちポケモンのステータスチェックメニューを開くとそこには
「♂」とあった。
「えと・・・じゃあ、ルミくん・・・。」
「く、クルゥ?」
「行くよ、モカ!」
「エーモ!」
いきなり出鼻をくじかれたけど、やることは変わらない。
モカの長所はその電気技だけではない。素早さだ。
これを下げればなんとかなるかもしれない。
そのためのルミちゃん・・・もとい、ルミくんなのだ。
いとをはく。
以前のバトルでクルミルが見せた技。
これは相手に糸を巻き付けることで素早さを下げる技だったのだ。
これを使えば普段素早さで負けていたがひょっとするとひょっとする。
我ながら策士としたり顔になる。
「いけ、ルミくん!いとをは・・・」
「モカ、アクロバット!」
「エモ!」
ぱたり。ルミくんはあっさりと倒れてしまった。
「あれ?」
「あたしだって、この1週間モカと頑張ったんだから。」
そういえばモカは電気タイプである前に飛行タイプでもあったのだ。
もちろん虫と草の2つのタイプを持つルミくんには効果は抜群だ。
「うぅ、ごめんね、ルミくん・・・。」
アタシ、この子に謝ってばかりだなあ。もっと強くならないと。
「頼んだよ、メメ!」
「ポー!」
「やっとメメの登場ね。でもモカのほうが有利だもん。」
「モン!」
結局メメとモカの一騎打ちになってしまった。
それでもいろいろ考えてきたんだから。
「モカ、スパーク!」
「エーモ!」
モカの体から電撃が火花になって飛び散る。
でもこれならなんとかメメが耐えられる。
そしてアタシが選んだのは・・・
「メメ、ついばむ!」
メメのくちばしがモカの体中をつつき回る。
痛がるというより、むしろモカはくすぐったそうだ。
ひとしきりつついた後、メメが何かをくわえていた。
「やっぱり持ってた、オレンの実。」
これでメメの体力が少しだけ回復する。まだ戦える。
「モカ、もう一度スパークよ!」
再びメメに火花が襲いかかる。
バチっ。一際大きな音がしたと思うとメメがどさりと落ちた。
戦闘不能?いや、ただ体がマヒしているだけだ。
それでも不利なことには変わりない。
今までならば。
「メメも頑張ったほうだけどこれで・・・」
「いえ、まだよ。」
羽を広げてメメは飛び直す。
「あれ?マヒしたはずなのに・・・。」
「これだよ、これ!クラボの実!」
相手は電気ポケモン。特性の静電気もあるし技でマヒになることもある。
それが一番警戒すべきことだと思い、メメに持たせていたのだ。
「いまだメメ、おんがえし!」
これまで一緒に頑張ってきたんだ。その中で一番信頼できる技。
だけど・・・モカはまだ倒れていなかった。
しかしお互いに体力は残りわずかだ。
おそらく次の攻撃で決まる。
アタシもカミツレちゃんもそれに気がついたのだ。
「メメ!」「モカ!」
「でんこうせっか!!」
「また負けちゃった~。」
「これであたしの20勝目だよ。やったね、モカ!」
「エモ~!」
「ポ~・・・。」
「クルゥ・・・。」
そんな情けない顔しないでよお。
メメとルミくんを力一杯ギュっとしてあげた。
また頑張ればいいんだから。
そしていつか一緒に・・・。
「それにしても。」
「なに?」
「あのフウロがこんなに強くなってるなんてどういう風の吹き回し?」
「えへへ・・・。」
すっかり空は赤くなり、少し冷たい空気が汗に当たって心地よかった。
「アタシ、もっと強くなりたいと思って。
だったら、飛行タイプのポケモンばかり見るんじゃなくて、
他のポケモンのことも知らなくちゃって思ったの。」
「クルゥ。」
モモの上で丸まっているルミくんと目があった。
「そしたらどんどん楽しくなって。いろんなことに挑戦したいなって。」
「ふ~ん。」
「アタシ、いつかパパみたいにいろんな世界を見てみたい。
どんな人がいるのか。どんなポケモンがいるのか。
もっともっと自分の可能性を信じたい。挑戦したい。」
「フウロならできると思うよ。」
「だから・・・その・・・」
「ぶっとビングだよアタシ!!」
「・・・なにそれ?」
「あれ?」
フウロ「ぶっとビングだよアタシ!!」完
・・・というSSでした。
とりあえずあれだ。
はねやすめの飛行無効時間が発動時のみだなんて、アタシ聞いてない!
カミツレさんがライモンポケモン強いもんなら
フウロちゃんはぶっとビングでいいと思うんです。
明日も会社です。
本日は以上です~。
「これであたしの19勝目。やったね、モカ!」
「エモ~。」
目を回しているマメパトのメメを撫でながら肩を落とす。
「アタシ、そんなに勝ててないの?」
たしかに相性悪い。
アタシの大好きな飛行ポケモン達に対してカミツレちゃんは電気ポケモン。
だからって同じ駆け出しトレーナー。
やっぱりショックだ。
「またやってる。いつも元気だなあ、2人は。」
「あ、アララギのおじさま。」
よくうちの飛行場を利用してくれるお客様で、ポケモンについて詳しい。
ただただ詳しいかと思ったら、エライ博士だと知ったのはほんの最近。
「あのねあのね、またカミツレちゃんに負けちゃったの。」
「だってフウロったらいつも飛行ポケモンしか使わないんだもん。」
「モン。」
エヘンとばかりに腕組みをしているカミツレちゃんと涙目のアタシを
おじさまは優しい目で眺めてくれていた。
「そうか、惜しかったね。ちゃんとポケモンセンター連れて行ってあげなさい。」
「ところでおじさま、その大荷物は?」
「ああ、君のお父さんに用だよ。仕事場かな?」
「とっくに次の便の準備してるよ。」
「そりゃイカン。またな、フウロくん、カミツレくん。」
慌てるあまりこけそうになるおじさまに、ポケモン博士の威厳は感じない。
だからこそ抵抗なく話せるのかもしれない。
「ああ・・・。」
メメの治療をしてもらい手持ちぶさたなアタシはポケモンセンターにある
トレーニングコートのベンチでため息をつく。
「どうしたの?」
「モン?」
エモンガのモカをかかえたカミツレちゃんが顔をのぞき込んできた。
「だって・・・。」
思わず不機嫌な顔になってしまう。
「アタシとカミツレちゃん、トレーナー歴は一緒なのに全然勝てないし。」
この4月の進級。
そのお祝いに、アタシはメメを、カミツレちゃんはモカを、
アララギのおじさまからもらったのだ。
「だってフウロ飛行ポケモンしか使わないもん。」
「モン。」
「あたし電気ポケモン好きだもん。」
「モン。」
ポケモンはトレーナーに似るっていうけど・・・この場合どうなんだろう。
「でもアタシ飛行タイプが好きなの。だからメメと頑張りたいの。」
「じゃぁ、他の飛行ポケモン使うのはどう?」
「たとえば?」
「電気に強いのは地面だから、グライガーは?」
「グライガー?このへんじゃ珍しいポケモンだよ。そんなのどうするの?」
「アララギのおじさまに頼んで・・・」
「ダメだよ、この前メメをもらったばかりだし。」
「じゃぁ、他のタイプのポケモンは?」
「飛行タイプのかっこよくてすごいところがいいの!」
う~ん。2人と1匹はいいアイディアはないものかと空を眺める。
スワンナが1匹、優雅に飛んでいくのが見えた。
「そうだ!」
これほどの名案があっただろうか。
「エモンガも飛行タイプじゃない。」
「そうだけど・・・?」
「・・・?」
「だったらモカちゃん貸してよ。これなら飛行タイプパーティーだよ!」
「イヤだもん。モカはあたしのポケモンだもん。」
「ええ、ちょっとだけでいいから・・・ほっぺプニプニモカちゃ~ん」
「あたしのポケモンがいなくなるもん!フウロとバトルできないよ?」
「それは困る・・・。」
「でしょ?」
「でもせめてほっぺをプニプニする権利くらいはあるはずです!」
「・・・それくらいなら。」
「エモ!?」
いつの間にか夕方になっていた。
ひとしきりほっぺを堪能したら、また悩んでしまった。
「やっぱり地道にメメと一緒に頑張るしかないか。」
「そうだよ、それが一番だよ。」
まだもやもやしながらもベンチから立ち上がる。
「よし、カミツレちゃん。今度は来週勝負だよ。それまでメメを鍛えるんだ。」
「うん、楽しみにしてる。今度も負けないもん。」
「モン。」
ほっぺをさするモカを抱いてカミツレちゃんは帰って行った。
さてとアタシも帰ろう。
「・・・あ。メメ引き取らなくちゃ。」
パパは今夜は便の都合でいなかった。
ママと2人の晩ご飯のあと、アタシはパパのお土産のいかり饅頭の箱を開ける。
「今日はつぶあんとカスタード~と。」
おやつをたずさえ、テレビの前のソファに座る。
「フウロ、晩ご飯食べてすぐにそんな食べちゃダメじゃない!太るわよ!」
「ママみたいに?」
「・・・まずは明日の朝ご飯なくていいかしら?」
「ごめんなさい。」
成長期だし、きっと全部身長にいくんだから。
ゆくゆくはきっとアララギお姉ちゃんみたいにスタイルよくなるんだから。
そんなことを考えていたが今はどちらかというとママ似かもしれない。
お饅頭を食べながらも昼間のことが気になった。
ああは言ったものの、メメだけでカミツレちゃんに勝てるのだろうか?
ぼんやりしながらテレビをつける。
最近始まったアニメをやっていた。
初心者同然の男の子がひょんなことから強い敵を倒すカードゲームのアニメだ。
内容はよくわからなかったけれど、その子がひたむきに頑張る姿を
何故か鮮明に覚えている。
「アタシも・・・この子みたいに頑張ればいつかきっと・・・。」
少し元気でてきたかも。それともお饅頭のおかげ?
早速アタシとメメの特訓の開始だ。
そればかりが気になって、学校でも授業は上の空、
給食も3杯しかおかわりできなかった。
「まずはレベル上げだよ。おー!」
「ポー!」
とにかくポケモンと戦ってバトルに慣れよう。
そう思い草むらをうろうろしてみた。
きずぐすりはいっぱいある。とにかくメメと頑張ってみよう。
「あ、あれは・・・。」
野生のクルミルだ。
虫ポケモンは飛行タイプに弱い。
これならマメパトでも勝てそうだ。
「ちょっとそこのクルミル!」
あ、驚かせちゃった。
クルミルはすごく怯えている。
ごめんね、ごめんね。
「アタシのメメとバトルしてください!」
「ポー!」
「く、クルゥ・・・。」
なんか申し訳ないなあ。そもそも野生のポケモンとバトルってこんな感じだっけ?
「メメ、かぜおこし!」
「ポポー!」
クルミルが何か糸みたいなものをはき出していたがそれを遮り、
メメのかぜおこしがヒットした。
「クルゥ・・・。」
ぱたり。クルミルを倒した。そういえば草と虫の2タイプなんだっけ。
「やったー、メメ勝てたよ!」
「ポッポー!」
「・・・あ、えと、クルミル、急にごめんなさい、そしてありがとう。」
そういえば初めてポケモンバトルで勝ったのか。
早速今のバトルを復習だ、とバッグからノートと鉛筆とポケモン図鑑を出す。
「え~と、今のバトルとわ・ざはと・・・。」
バトルでの初勝利に昂揚していた。しかし、反面冷静であったのかもしれない。
「そうだ!」
1週間なんてあっという間だった。
あのクルミルとのバトルの後も草むらを回っては色々なポケモンとバトルした。
マメパトも新しい技を覚えた。
「カミツレちゃん、勝負だよ。」
「あたしも今日が楽しみだったんだから。負けないもん!」
「モン!」
カミツレちゃんのポケモンはモカだけみたい。
「あのね、アタシ新しいポケモン捕まえたの。使ってもいいかな?」
「1対2ってこと?う~ん、でもどんなポケモンか気になるな。使っていいよ。」
「よ~し、行け、ルミちゃん!」
「クルゥ!」
「!?」
「!?」
アタシの新しいポケモン、クルミルのルミちゃん。
そう、初勝利のバトル相手のあのクルミルだ。
「・・・虫ポケモン?」
「そうだよ、ルミちゃんだよ。」
「飛行ポケモンじゃなくて?」
「今はこんなちっちゃな虫だけど、いつか羽が生えて大空を飛ぶんだから!」
「クルミィ!」
「そう・・・だったっけ?」
このアタシの大胆な理想は近いうちに大きく裏切られることになるのだが
それはまた別の話なのである。
「・・・それとフウロ。」
「なに?」
「その子のこと、ルミちゃんって呼んでるけど・・・。」
「うんうん。」
「オス・・・だよ。たぶん。」
「え?」
気づかなかった。名前から勝手にイメージしてニックネームつけてたから。
本当だった。
図鑑の手持ちポケモンのステータスチェックメニューを開くとそこには
「♂」とあった。
「えと・・・じゃあ、ルミくん・・・。」
「く、クルゥ?」
「行くよ、モカ!」
「エーモ!」
いきなり出鼻をくじかれたけど、やることは変わらない。
モカの長所はその電気技だけではない。素早さだ。
これを下げればなんとかなるかもしれない。
そのためのルミちゃん・・・もとい、ルミくんなのだ。
いとをはく。
以前のバトルでクルミルが見せた技。
これは相手に糸を巻き付けることで素早さを下げる技だったのだ。
これを使えば普段素早さで負けていたがひょっとするとひょっとする。
我ながら策士としたり顔になる。
「いけ、ルミくん!いとをは・・・」
「モカ、アクロバット!」
「エモ!」
ぱたり。ルミくんはあっさりと倒れてしまった。
「あれ?」
「あたしだって、この1週間モカと頑張ったんだから。」
そういえばモカは電気タイプである前に飛行タイプでもあったのだ。
もちろん虫と草の2つのタイプを持つルミくんには効果は抜群だ。
「うぅ、ごめんね、ルミくん・・・。」
アタシ、この子に謝ってばかりだなあ。もっと強くならないと。
「頼んだよ、メメ!」
「ポー!」
「やっとメメの登場ね。でもモカのほうが有利だもん。」
「モン!」
結局メメとモカの一騎打ちになってしまった。
それでもいろいろ考えてきたんだから。
「モカ、スパーク!」
「エーモ!」
モカの体から電撃が火花になって飛び散る。
でもこれならなんとかメメが耐えられる。
そしてアタシが選んだのは・・・
「メメ、ついばむ!」
メメのくちばしがモカの体中をつつき回る。
痛がるというより、むしろモカはくすぐったそうだ。
ひとしきりつついた後、メメが何かをくわえていた。
「やっぱり持ってた、オレンの実。」
これでメメの体力が少しだけ回復する。まだ戦える。
「モカ、もう一度スパークよ!」
再びメメに火花が襲いかかる。
バチっ。一際大きな音がしたと思うとメメがどさりと落ちた。
戦闘不能?いや、ただ体がマヒしているだけだ。
それでも不利なことには変わりない。
今までならば。
「メメも頑張ったほうだけどこれで・・・」
「いえ、まだよ。」
羽を広げてメメは飛び直す。
「あれ?マヒしたはずなのに・・・。」
「これだよ、これ!クラボの実!」
相手は電気ポケモン。特性の静電気もあるし技でマヒになることもある。
それが一番警戒すべきことだと思い、メメに持たせていたのだ。
「いまだメメ、おんがえし!」
これまで一緒に頑張ってきたんだ。その中で一番信頼できる技。
だけど・・・モカはまだ倒れていなかった。
しかしお互いに体力は残りわずかだ。
おそらく次の攻撃で決まる。
アタシもカミツレちゃんもそれに気がついたのだ。
「メメ!」「モカ!」
「でんこうせっか!!」
「また負けちゃった~。」
「これであたしの20勝目だよ。やったね、モカ!」
「エモ~!」
「ポ~・・・。」
「クルゥ・・・。」
そんな情けない顔しないでよお。
メメとルミくんを力一杯ギュっとしてあげた。
また頑張ればいいんだから。
そしていつか一緒に・・・。
「それにしても。」
「なに?」
「あのフウロがこんなに強くなってるなんてどういう風の吹き回し?」
「えへへ・・・。」
すっかり空は赤くなり、少し冷たい空気が汗に当たって心地よかった。
「アタシ、もっと強くなりたいと思って。
だったら、飛行タイプのポケモンばかり見るんじゃなくて、
他のポケモンのことも知らなくちゃって思ったの。」
「クルゥ。」
モモの上で丸まっているルミくんと目があった。
「そしたらどんどん楽しくなって。いろんなことに挑戦したいなって。」
「ふ~ん。」
「アタシ、いつかパパみたいにいろんな世界を見てみたい。
どんな人がいるのか。どんなポケモンがいるのか。
もっともっと自分の可能性を信じたい。挑戦したい。」
「フウロならできると思うよ。」
「だから・・・その・・・」
「ぶっとビングだよアタシ!!」
「・・・なにそれ?」
「あれ?」
フウロ「ぶっとビングだよアタシ!!」完
・・・というSSでした。
とりあえずあれだ。
はねやすめの飛行無効時間が発動時のみだなんて、アタシ聞いてない!
カミツレさんがライモンポケモン強いもんなら
フウロちゃんはぶっとビングでいいと思うんです。
明日も会社です。
本日は以上です~。
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